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特集

シリーズ
地球と、生きる
小さな世界の
豊かな生態系

FEBRUARY 2010


 地球は、生物圏の存在が確認されているただ一つの惑星だ。生物が暮らしているのは、地球の表層にはりついた薄い膜のような領域でしかない。だが、その生物圏こそが、私たちの存続に必要な環境を維持できる唯一のものなのである。

 生き物のほとんどは、地球の表層とそのすぐ下で生活している。こうした生物の一つひとつが、地球全体の生命の維持に不可欠な化学反応のサイクルに組みこまれている。枯れた植物や動物の死骸を分解する生き物、その生き物に寄生する生物やそれを食べる捕食者、さらにその捕食者を食べて生命をつなぐ動物……。絶えず繰り返される誕生と死のサイクルのなかで、最終的にはすべてが土に返り、植物の光合成に必要な栄養分となる。この仕組みはきわめて精巧で、人類のいかなる技術をもってしても太刀打ちできない。ひとたび循環が滞れば、唯一無二の生物圏の存続が危ぶまれることになる。

 地面をはいまわる虫は、気持ち悪い存在にしか思えないかもしれない。だが、それらも含めた生物すべてとその多様性が、私たちには不可欠なのだ。それほど重要な存在なのに、私たちは地表にすむ生物のことを驚くほど理解していない。それは研究者も同じだ。たとえば、キノコやカビといった真菌類は地球上に150万種いると推測されているが、確認されているのは、たったの6万種しかない。その真菌類と土中で共生している線形動物、いわゆるセンチュウは、数万種が見つかっているが、実際には数百万種もいると言われる。

 だが、そんな真菌や線形動物でさえも、数ではとうていかなわないのが、細菌だ。庭の土を指でつまんでみたとしよう。わずか1グラムほどのその土の中には、数千種の細菌が何百万とうごめいている。その多くが、研究者にとっても未知のものである。

 私の専門であるアリもそうだ。アリは比較的よく研究されていて、1万2000種が見つかっているが、それでも実際には2倍から3倍もの種類がいると推定されている。私が2003年まで研究していたオオズアリ属は、確認されている種の数がアリのなかで最も多く、生息数も最多の部類に入る。18年にわたる研究を通して確認した624種のなかで、337種は新種だった。ただ、そのうち詳しく研究されているのはほんの十数種しかない。

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