サンゴ礁保全プロジェクトの沖縄プロジェクトリーダーである静岡大学創造科学技術大学院の鈴木款(よしみ)教授が、研究内容やスタッフを紹介します。

鈴木 款 YOSHIMI SUZUKI / 静岡大学創造科学技術大学院教授

サンゴ礁研究の第一人者で、第10回国際サンゴ礁シンポジウム科学プログラム委員会委員長を務め、国際サンゴ礁学会評議員、日本サンゴ礁学会評議員でもある。

サンゴ礁便り (1)<2008年5月28日>

サンゴ礁を自然の治癒力で再生しよう

 「サンゴが白化する原因を科学的に明らかにしてサンゴとサンゴ礁を再生する」。この目標に向かい本プロジェクトチームは研究調査に取り組んでいます。本プロジェクトには、ユニークな特長が二つあります。一つはサンゴの白化現象を起こす原因がサンゴ内とサンゴ礁のミクロな生態系にあると考えたこと、もう一つは研究を研究者だけでなく市民と企業に参加してもらい、“産学民”のみんなで成果を共有しようと考えたことです。「サンゴ礁のミクロ生態系」と聞くと、「えっ、初めて聞いた」と思われる方も多いでしょう。そう、これはミクロの名が入っていることからもわかる通り、ミクロサイズの生物の世界のことです。具体的には褐虫藻、微生物、藍藻、ウイルスなどが、お互いに共生している世界をさします。それぞれのミクロの生物は光合成でアンモニアや硝酸を利用してタンパク質や糖類を生産する、また呼吸や分解でアンモニア等を放出します。これらの物質循環がミクロの世界を動かしている力です。

 本プロジェクトはサンゴ礁の有機物循環のリーダーの鈴木 款(よしみ)、ミクロ生物の動態と炭素・窒素循環のカサレト・ベアトリス教授、微生物解析の吉永 光一教授、色素解析の塩井 祐三教授、サンゴ礁の無機炭素・酸素循環の藤村 弘之博士、地形・地理学の中井 達郎博士、サンゴ礁学の中野 義勝技官、分子生物学の鈴木 利幸博士を中心に博士課程の学生(アゴステヌ、ファイロッツ、城間、樋口、入川、大胡等)が多数参加して進めています。

沖縄で研究調査に取り組む、沖縄プロジェクトチームのみなさん

 この3年間の研究の主な成果としては、大きく二つあげられます。

 一つは、サンゴの白化現象の原因が海水温の上昇だけでは説明できない可能性を明らかにしたこと、もう一つは白化現象はサンゴの体内にいる褐虫藻がサンゴの外に逃げることによって起きると、これまで一般的に考えられてきたのですが、必ずしもこれが事実ではない可能性を明らかにしつつあることです。

 この二つの成果は、今までのサンゴの白化に関する常識を根底から変える可能性のある重要なことです。科学の成果は繰り返し再現されることが必要であり、私たちは今後も地道な研究調査に取り組んでいきます。

 ひとつひとつの成果を得ることは容易ではありません。多くの時間、体力、資金、人々が必要ですが、三菱商事の全面的な信頼と支援がそれを支えています。サンゴ礁を自然の治癒力で再生しようと考えているこのプロジェクトには未来があります。今後とも支援をよろしくお願いします。